フロンティア

作成日:2021.01.07

【産婦人科医師が解説】
第3章 女性ホルモン変動に対応する方法

第3章 女性ホルモン変動に対応する方法

前回までで、女性は月経・産前産後・思春期や更年期など、女性ホルモンが変動することによって、心身の不安定、特に自律神経や情動面、免疫面などの不調があらわれやすいというお話をしました。

特に、もともと自律神経が弱いひと、情緒が不安定になりやすいひと、生活が乱れていて疲れや寝不足が溜まっているひとは、これらの症状が強く出やすい特徴があります。

でも、体質だから、忙しいから、ストレスが多い生活だからと諦めてはなりません。
まず自分の身体の内側を知ること、そして、適切な情報や専門家とつながることで、必ず楽にしてゆくことができるのです。

例えば、イライラして子供や家族、友人や同僚にあたってしまう、後で“あんなにひどいこと言わなければよかった”と後悔します。“自分はなんてダメなんだろう”と落ち込むこともしばしばです。
でも、「ホルモンの変調の時期だから、体調が悪いの。ごめんね。」と声をかけることができたら、自分も相手もほっとするでしょう?
そして、「こういう治療がいいらしいよ、こんなサプリもあるってよ?」と情報をくれるかもしれません。だから知ることが治療や改善策の第一歩なのです。

次に、自分を大事にする意識を持ちましょう。
あなたが元気になって、明るく笑っていられれば、きっと周囲も幸せです。
だから、まず自分に時間と手間をかけてよいのです。
例えば、健康診断やドックを受ける、婦人科クリニックを受診する、メノポーズカウンセラー(更年期障害やその対応についてアドバイスしてくれるカウンセラー)に相談するなど。

きっと、他に重大な病気がないことがわかったら、
「更年期ですね」
などの診断とともに、治療や改善法について提示してくれるでしょう。

産婦人科で受信する女性

次に、更年期治療や改善法にとりかかります。
世界中でこの不快症状(生活が不自由なほどの症状は更年期障害と言います。)に最もよく使われているのは、「女性ホルモン補充治療」です。

女性ホルモンのエストロゲンを内服、あるいはジェルやパッチなどの経皮吸収剤で補って、ホルモン低下による不快症状を和らげる方法です。 始めて2週間~2ヶ月ほどで症状が軽くなり、通常の生活ができるようになります。使うホルモン量はごくわずかですが、体内に入ったエストロゲンは脳のホルモン中枢、視床下部に届き、自律神経や感情の暴走を抑えます。それによって、動悸、のぼせ、めまい、不安、不眠、イライラなどが改善していきます。

乳がんになりやすくなる、とか、いつまで続けなくてはならないのか、と心配する方がいますが、それほど量や期間はたくさん使わなくても大丈夫です。 一度試してみる価値は、リスクを大きく上回ります。

特に、寿命が長くなり働く女性が増えた現代では、更年期世代が体調不良で戦線離脱すると社会にとっても大きな損失になります。ぜひ、婦人科に相談してみてください。
エストロゲンと黄体ホルモンの併用療法、またその量や種類の組み合わせなど、効果を見ながら調整する知識と経験を持った婦人科医が、あなたのかかりつけになることが大事です。

また、漢方治療もよく使われます。
ホルモンも漢方も全身作用で、崩れたバランスを取り戻し、自分の弱ってしまったところを補ってくれます。 漢方専門医、あるいは、漢方も処方できる婦人科医に相談しながら進めましょう。
漢方は、自分の体質気質に合った「マイ漢方」が見つかると、いつでも飲み始めたり、増やしたり、減らしたり、休んだり、体調に合わせて調整できます。

カラダに優しい漢方

それから、抗うつ剤や入眠剤、抗不安薬など、どうしても調子が悪い時には、頓服したり軽くホルモン治療や漢方と併用してみるなど、上手に使えればかなり役に立ちます。
薬に頼るのではなく、使いこなすイメージで。これも信頼できる、かりつけ医に相談しながら進めましょう。

あとは、自分でできるセルフケアはたくさんありますし、それぞれ、効果が確認されている良い方法がいくつもあります。まず、サプリメント。
大豆イソフラボン、プエラリアミリフィカ、ハナビラタケなどがあります。

カラダに優しい漢方

植物性エストロゲンと呼ばれ、エストロゲンによく似た分子構造をしていて、体内でエストロゲンの代わりに働いてくれます。

薬のエストロゲンよりホルモンとしての活性は弱いのですが、その分安全に使えるメリットがあり、確かにのぼせ、イライラ、不眠などが楽になって元気になる人たちがいます。
ホルモン治療が使えない理由がある人(乳がんや心筋梗塞、脳梗塞、血栓症などの既往)も使えますので、かかりつけ医に相談しながら試してみてください。

生活習慣を整えることも、もちろん基本です。

質の良い睡眠、軽い運動、バランスのとれた食事

・タンパク質やビタミン、ミネラルをしっかりとること
・ストレッチやウオーキングなどの適度な運動習慣
・ちゃんと寝ること、休むこと
自分の健康と快適のためにやるすべてのことは、それぞれ健康にとってよい効果があります。さあ一歩踏み出しましょう。

次回は、ITはなびらたけについて、その科学的データについてご紹介します。

解説いただいた方
女性ライフクリニック銀座・新宿 対馬ルリ子先生

対馬ルリ子先生 (ITはなびらたけアドバイザー)

医療法人社団 ウィミンズウェルネス
女性ライフクリニック銀座・新宿
理事長、産婦人科医師・医学博士

1984年、弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックを開院