フロンティア

作成日:2020.5.12

【産婦人科医師が解説】
第1章 女性ホルモンとは

女性ホルモンとは

女性の守り神、女性ホルモンについて知りましょう。

男性と女性の違いは、実はそんなに大きなものではありません。
人間として同じ臓器、同じ仕組み、同じ機能で、男女は出来ています。

でも、10代から出てくる性ホルモン・・男性ホルモンと女性ホルモンは、見た目も、声や態度も、考えかたや生きかたも、男女の違いを際立たせます。例えば男らしいといえば、はっきりとした態度や堂々としたさまを示し、女らしいといえば優しく思いやり深い事を思い浮かべます。

しかし男女の性ホルモンは、実はどの人も両方とも持っていて、濃淡が違うだけなのです。
女性ホルモンは、乳房など女性らしさを体や機能に表現するものですが、男性も思春期(10代)には男性ホルモンと一緒に女性ホルモンも体内に産生されるので、胸が膨らむという事を経験したり、女性も体毛が濃くなったり、ニキビがおでこや背中に出来てきたりと悩ましい日々を過ごします。

これらは、ホルモンバランスが安定する成熟期(20代)に入ると自然に落ち着いていきます。でも、知識がないと心配ですよね!

性ホルモンは、子供を作る、つまり次世代の命を生み出すために、思春期に自然に発達する大事な機能です。特に、生命リスクの高い出産から女性の命を守るために、とても大きなパワーを持っています。
女性が男性よりも生命力が強く寿命が長いのは、女性ホルモンのおかげなのです。

男女の性ホルモン"

では、女性ホルモンはどこから出るのでしょうか?

それは、卵巣です。卵巣は、骨盤の底の方、膀胱の後ろにある鶏卵大の子宮の、左右に二つぶらさがっています。卵管という子宮から出ている管の下に、靭帯で繋がれてブランとぶら下がっています。男性の精巣も、体の外にぶら下がっていますね。もともと赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるときには、精巣も赤ちゃんのお腹の中にいたのですが、産まれてくる前に精巣は体の外に出され、卵巣は体の中に留まります。

性ホルモンは、卵巣の中の卵が育つときに出てきて、血液中を流れ全身に届きます。性ホルモンを出させるのは(卵を育てろと指示するのは)脳です。生きるために大事なこの部分は、視床下部―下垂体系と呼ばれ、呼吸や心臓の拍動、体温の調節などの自律神経機能とともに、甲状腺ホルモン、副腎脂質ホルモン、成長ホルモンなどのホルモン機能の司令塔にもなっています。そして、卵巣や精巣に、動け!ホルモン(卵子や精子)を出せ!と指示するのもこちらです。

女性ホルモン分泌の仕方

ホルモンは、血液の流れに乗って、全身に運ばれていきます。女性ホルモンは、乳房や子宮を発達させますが、同時にお肌のコラーゲンを増やしたり、関節や筋肉を柔らかくする効果、気分を明るく、女性を社交に向かわせる効果ももたらします。

ここで、男性性と女性性の違いが際立ってくるわけですが、この体の変化に対して違和感を感じる人がいます。体の性と自分が感じる心の性が一致しないこの感覚は、性同一性違和あるいは不合といい、一時的なこともあり、ずっと続く場合もあります。以前は精神障害と思われていたこともありましたが、現在では「障害ではない」と宣言され、多様なジェンダー(社会的性)のありかたの一つとして認められ、戸籍の名前や性別も変更できるようになりました。

誰もが、性別より、唯一無二の個人として人間として認められることが大事です。しかし、時に体の中の女性ホルモンは、女性の心や体の調子を乱し、自信を失わせることがあります。上手に女性ホルモンとつきあい、明るく前向きに生きるエネルギーとして利用していきましょう。

次回から、女性ホルモンの特徴とそのコントロール法について、医療とヘルスケアの両面からお話ししていきます。

解説いただいた方
女性ライフクリニック銀座・新宿 対馬ルリ子先生

対馬ルリ子先生 (ITはなびらたけアドバイザー)

医療法人社団 ウィミンズウェルネス
女性ライフクリニック銀座・新宿
理事長、産婦人科医師・医学博士

1984年、弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックを開院