2017年12月7日(木)に神戸で開催された日本分子生物学会で、東京女子医大よりハナビラタケの研究発表を行いました。 2014年より東京女子医大、産業技術総合研究所、インタートレードの3者で取り組んできた「ITはなびらたけプロジェクト」の成果発表です。
当日は研究の中心メンバーである、東京女子医科大学循環器小児科の古谷先生、川口先生、元産業技術総合研究所で現在九州産業大学生命科学部教授の木山先生、インタートレード田中がポスター発表を行い、多くの研究者や企業の方々に興味を持っていただきました。
●学会名:2017年度生命科学系学会合同年次大会(ConBio2017)
●演題名:ハナビラタケ有効成分の探索と利用:エストロゲン様活性の解析と評価
Identification and application of active ingredients in Sparassis crispa Analysis and evaluation of estrogen-like activity
●発表形式:ポスター発表
●ポスター番号:2LBA-128
●発表日:12月7日(木)
●セッション時間:14:30-15:45
●会場:ポスター会場(ポスター会場1-2 神戸国際展示場 1号館 2階)
ハナビラタケ(Sparassis crispa)には免疫活性など多くの生理作用が報告されている。その多くは主成分であるβ‐グルカンの生理活性によるものと推察されてきた。しかし近年、 Hanabiratakelideや Sparassolなどの新規活性物質が単離され、抗癌、老化防止など新たな創薬源としても注目されている。一方、エストロゲンは膜や核内のエストロゲン受容体に結合し、遺伝子発現を制御することで、細胞の増殖促進、動脈硬化抑制などの機能を果たし、生理作用に影響することが知られている。本研究では、我々の開発したエストロゲン活性評価法を利用して新たなハナビラタケ有効成分の探索を行ったので報告する。まず初めに菌糸体の抽出液( SCE)を調製し、3種類の濃度(1μg/ml、10μg/ml、100μg/ml)の条件下で乳がん( MCF-7)細胞を刺激し、細胞増殖活性を調べた。エストロゲン(17β-estradiol、 E2)で刺激した場合と比較したところ増殖活性は認められなかった。次に、細胞内の Erk/Aktシグナル伝達に対する影響を、ウェスタンブロット法を用いて調べた。 SCEは E2と同様、 Erkでは刺激開始5分後に、 Aktでは30分後に最も高い活性を示した。そこで、 SCEの遺伝子レベルの影響を評価するため、 DNAマイクロアレイを用いたアッセイを行い、 E2と SCEとの間でエストロゲン応答遺伝子の発現プロファイルについて相関係数(R値)を用いて比較した。その結果、 E2と SCE10(10μg/ml で刺激)の間では0.76、 SCE100(100μg/mlで刺激)との間では0.62と、いずれも高い値を示した。一方、 E2と SCE-EtOAc(SCEを酢酸エチルで抽出した試料)との間の値は0.04 と低かった。以上のことから、ハナビラタケ抽出物には増殖活性は示さないが遺伝子発現レベルでエストロゲン様の活性を示す親水性の物質が含まれていることが推測できる。以上の結果から、本研究で判明した有効成分は、創薬や健康食品として利用できるだけでなく、今後、化学物質を特定することで新たなホルモン製剤としての利用も期待できる。
分子生物学(分子レベルで生命現象を解明し,また情報的高分子(蛋白質と核酸) の分子的特性から, 基本的生命現象を説明しようとする学問)に関する研究・教育 を推進し、我が国における現代生物学の発 展に寄与することを目的とした学会。 年次で開催される日本分子生物学会年会は日本でも屈指の規模を 誇り、研究者の間では非常に有名な学会。